ピックアップアーティスト
ロックスピリットをコミックで表現!『BECK』
私シナトラは結構マンガ好きです。昔からいろんな作品を読んでいますが
音楽をテーマにしたものはやはり表現が難しいのか、数えるほどしか記憶に
ありません。
この作品はこれまでに見た事のない表現力で、ロックという音楽のもつ
メッセージ性と疾走感を強力に見せつけてくれます。
そしてひとつのロックバンドが成功と挫折を繰り返しながら成長していく過程と
そのエネルギーを持続していくことの難しさを見事に描ききっています。
主人公は趣味も特技もとくにない普通の中学生:田中幸雄、通称・コユキ。
このコユキ、ある日偶然道で出会ったヘンな犬を助けたことにより犬の飼い主である
「あの男」に出会ってしまう。助けた犬の名前は「BECK」。
沖縄出身のアイドル「国吉ちえみ」を最高の音楽と信じて疑わなかったコユキが、
全米のカリスマバンド「ダイイング・ブリード」との衝撃的な出会いによって
生活の中の何かが変わっていく…。
作者は「ゴリラーマン」「ストッパー毒島」のハロルド作石。
「月間少年マガジン」にて連載中の作品です。
この作家は知ってはいましたが、まともに読んだことがありませんでした。
『BECK』も本屋やコンビニでギターを持った主人公・コユキの表紙を見かけ、
「ああ、音楽のマンガなんだな」と思ってはいましたが読んだことはありませんでした。
たまたま喫茶店で他に読むものがなかったので置いてあった「月間少年マガジン」を
手に取ったところ、その独特の作風にすっかりはまってしまいました。
その後マンガ喫茶でいっきに全巻読破しましたが、何度でも読み返したくなる
魅力にあふれています。
この作品の魅力のひとつにライブシーンの表現のしかたがあると思います。
音楽の演奏シーンを音のないマンガで表す ・ ・ ・
これは普通に考えても難しいことですよね。
このマンガではその難問を、プレイヤーと観客の表情によって表現しています。
とくに一見フツーの中学生であるボーカルのコユキが歌いだしたときの観客の表情。
その外見と歌声のギャップにあぜんとする表情で、その衝撃を見事に表しています。
その他の表現といえば「ギュイイイイイイーン」とか「ドッタンドドタン」とかいう擬音的な
表現や、歌詞(すべて英語)の一部があるだけなのに「BECK」の音楽がアタマのなかに
聞こえてくるんです。
この作品はアニメ化もされていますし、サウンドトラック も出ています。
アニメは夜中に放送されてたのを見てみました。
当然音楽には力が入れてあって、内外の新進気鋭のアーティストが曲を提供していて
興味をそそられますが先に原作を読んでしまっていると「なんか違うなー」っていう感じは
いなめません。
むしろFMなんかで海外アーティストの曲を聴いて、「あっこの曲 BECKっぽい」とか思って
楽しんでいます。
これってある意味、スゴイことですよね。
音のない原作で見る人の頭の中にその音楽をイメージさせちゃっているわけですから。
もちろんこの作品の最大の魅力は音楽なんだけど、それを実際に音として前面に
出しちゃうと、原作の持つ独特の世界感みたいなのが薄れちゃうんでしょうか。
よくできた小説を読んだ後で、それが映画化されたものをみるとがっかりしてしまう、
そんな感覚でした。
とはいうものの、アニメから先に入った人はそんなに抵抗なく楽しんでるみたいですが。
ストーリー自体はよくある主人公の成長ものです。
これといって特技も目立つところもない中学生だったコユキが、ちょっと年上の
スゴ腕ギタリスト、竜介に出会ったことからロックという音楽の世界にのめりこんで
いく ・ ・ ・ ・。
よくある展開ですが、個性的なメンバーのキャラクターの書き分けやライブハウスの
内情、音楽業界のドロドロした世界などがよく描かれていてあきさせません。
そしてこの作品にスリリングさを与えているのが『BECK』というバンドのあやうさ
みたいなもの。
これは『BECK』に限らず全てのロックバンドにいえるのかもしれませんが、
メンバーの気持ちがひとつになったときには何万人もの観衆を熱狂させる力を
発揮するが、ちょっとした誤解、衝突、テンションの途切れで最悪の演奏をしてしまったり、
バンドが空中分解を起こしてしまう・・・。
なかでもお気に入りのキャラはギタリストの竜介。
まだ若いのに驚異的なギターテクニックの持ち主で、昔は全米のカリスマロックバンド
「ダイイングブリード」のギタリスト、エディと組んでいたという経歴の持ち主。
英語もペラペラで、妙に大人びた人生観の持ち主。
かと思えば、金や女にだらしなく、酒にもおぼれる最悪な一面もあわせもつ。
肝心なときにいなくなったり、まったくあてにならないところもあるが
彼が加わった時のバンドの『無敵感』は世界に通用するスケールである・・・。
彼の演奏シーンはマンガながらゾクッとさせられてしまいます。
そしてこんな竜介にあこがれて一途に努力し続けるコユキ。
他に自信のあることがいっさいない彼だけに、はじめて見つけた
自分が夢中になれることに一所懸命な彼の姿勢には好感がもてる。
そして無我夢中でバンドのメンバーについていくうちに秘めていた才能を
開花させていく・・・。
ちょっと都合のよすぎる設定だなあと思わないでもないけど、案外自分の
才能を開花させる人間って彼のように「自分にはこれしかない」って盲目的に
信じて努力し続ける人なのかも・・・とも思ってしまいます。
ともかく一度原作を通して読んでみることをオススメします。
(たしか最新巻は25巻くらいだと思います。)
ただし最初のほう巻の絵はあまりうまくないので、5巻くらいまでは
がまんして読んでください。そのあたりからカッコよくなってきます。
『BECK』の音楽的背景を読み解くガイドブックなども発売されています。
お好きな方はどうぞ♪

2006年02月23日 21:45